第9章 ミント-before-
その手が俺の顔に触れた。
ティッシュで涙を拭いながら、大野さんは俺の隣に座った。
ぎしりとソファが傾く。
「やめて…俺に触らないで」
もう、俺の前から居なくなるんだから。
一生会えなくなるわけじゃない。
生きてる限りは、どこかで会える。
だけど…俺の日常からは、消えてしまうんだから。
「じゃあ泣くなよ…」
大野さんの手は、俺の涙を拭っていく。
「…触んなっ…」
振りほどこうとした手を掴まれた。
「……なによ……」
「ごめん…」
その手を引き寄せられた。
強引に大野さんの胸に抱きしめられた。
何が起こったのかわからなくて、呆然とした。
「そんなに…俺のこと…嫌い…?」
「え…?」
「俺は…お前のこと…」
ぎゅっと痛いくらい抱きしめられた。
「ごめん…」
「大野さん…?」
「俺…そんなにお前に嫌われてるって思わなくて…」
「ちょ、ちょっと待ってよっ…」
慌てて身体を離そうとするけど、大野さんはキツく俺のこと抱きしめて離さない。
「嫌いなわけ無いじゃないっ…」
なんで?なんでそんなこと思ってんのよ!
「俺はっ…あなたがこのまんまだと死んじゃうと思ってあんなこと言ったんだ!嫌いだったら、このまま放っておくって!」