第9章 ミント-before-
「な、なんでそんなこと…」
「気がついてないと思ってた?」
箸を弁当の上に置いて、大野さんときちんと向き合った。
「正直、ずーっとイライラしてた」
「それは…わかってる…」
「原因が自分だって、思わなかった?」
「うん…ごめん…」
どっちだよ。
相変わらずはっきりしない返事するよな…
「いいんじゃない?」
「…え?」
「やる気ないんなら辞めれば?」
「ニノ…」
なんだか知らないけど、傷ついた顔をした。
「…なんでそんな顔するのよ…」
「いや…そんな風に言われると思わなかったから…」
「いいんじゃない?10周年だし…これを最後の挨拶にしてさ。ファンの子も、今までお世話になった大勢の皆さんもきっとライブ見に来てくれるだろうから、ちょうどいいんじゃない?」
大野さんが立ち上がった。
何をするのかと思ったら、俺にティッシュの箱を差し出してきた。
「…なに…?」
「顔、拭けよ」
「なんで?」
「泣いてる」
知らないうちに、泣いてたみたいで。
ばかだなあ…泣いたって大野さんは戻ってこないのに…
なんで涙なんか…
ティッシュの箱を見ながらそんなことを思ってたら、大野さんの手がティッシュを取った。