第9章 ミント-before-
やっぱり…何を話したらいいかわからない。
二人っきりだと、本当にもうどうしていいかわからない。
いつもはスタッフさんとかがいるからなんとかなってたけど、今日は人が少ない。
ガランとした控室で二人っきりで、黙々と弁当を食べた。
もしも…大野さんが辞めたがってて…
どうしても自由になりたいというなら、もう俺にはどうしようもない…
こんなに嫌がってるのに引き止めたら、この人死んじゃうかもしれない。
ふと、そんなことを思った。
思って大野さんの顔を見たら、俺のこと見てた。
「…なに?」
「…いや…」
また弁当に向き直って、黙々と食べる。
本当は、離れたくない。
離したくない。
だけど、この人が死んじゃったら…本当に二度と会えなくなる。
そこまで思い至って、ようやく俺は諦めが付いた。
ちょうど10周年…
これを最後の挨拶にして、大野さんが辞めてしまっても…
…いいじゃないか…
「ニノ…?」
大野さんが呼ぶから顔を上げた。
「どうした?食ってないけど…」
「あのさ」
「ん?」
「辞めたいの?嵐」
「えっ?」
「ううん…芸能人、辞めたいの?」
「ニノ…」
控室の中はしんとしてた。
俺達の他には、誰も居なくなってた。