第9章 ミント-before-
年が明けて、いよいよ10周年だ。
前の年からスケジュールはつまりっぱなし。
大野さんはドラマが始まって、増々荒んでる。
それでも10周年のライブ、集大成のアルバム…やることはたくさんあって。
それに前年に発売したCDやDVDが軒並み賞レースの上位に食い込んで、それまで受賞した賞の倍くらいの賞を貰ったり。
どんどん嵐は軌道に乗っていく。
それなのに、どんどん大野さんは下降線を辿っていく。
周りは慌ただしくて、大野さんのそんな変化に気づいているのかいないのか…
あの頃に似てる…
京都から帰ってきて、もう嫌だばっかり言ってた頃。
事務所を辞めてイラストレーターになりたいって、そればっかり言ってた頃。
周りの大人は、大野さんの才能を認めて、デビューに向けて動いてるのに。
一生懸命になってるのに。
あの頃は俺も辞めたくてしょうがなかったから、人のこと言えないけど…
あんなにダンスやらなにやら頑張ってたのに、あっさり捨て去ろうとしてるこの人のことがちっとも理解できなかったなあ…
今も。
これだけ周りが盛り立ててくれようとしてるのに、ちっとも乗らない大野さんのことが、わからなくて…
だんだん、遠くなってく。