第9章 ミント-before-
撮影が終わって、俺はスタッフさんに歓待されながらロケバスに戻った。
着替えをしてロケバスを出ると、大野さんが衣装を着けたまま待っていた。
「あれ…?撮影は?」
「ああ…今、休憩…」
「そ…じゃ、お先…」
止められなかった
溢れ出る感情が。
芝居に出てしまっていたんじゃないか
そう思ったら、大野さんの顔をまっすぐに見られなくて…
足早にその場を去ろうとした。
「ニノっ…」
急に腕を掴まれて驚いた。
「…なに…?」
「俺…嫌いじゃないから…」
「え?」
「おまえのこと、嫌いだなんて思ってない」
わざわざ…それを伝えるために、待っててくれたの…?
「…今日、嬉しかった」
ぐっと俺の腕をつかむ手に力が入った。
「大野さん…?」
「ニノが…真剣に芝居してくれて…嬉しかった…」
「な、何言ってんのよ…そんなの当たり前でしょう?」
「ん…わかってるんだけどさ…俺なんかに真剣に相手してくれて…」
「なに言ってんのよ…」
「ほんと、嬉しかったんだ…」
「ばかっ…」
何言ってるのこのひと
何で自分のこと”俺なんか”っていうの…
「あんた、このドラマの主演でしょ!?俺なんかって拗ねてるの、選んでくれたディレクターさんに失礼だと思わないの!?」