第9章 ミント-before-
魔王の収録日が来た。
その日は曇りでどんよりとした空だった。
「熊田正義役、嵐の二宮和也さんです!」
スペシャルゲストということもあって、特別に現場で紹介を受けた。
大野さんは照れくさそうに俺のこと見てた。
スタッフさんがディレクターズチェアを2つ用意してくれて、そこに座っているとメイキングの取材を受けた。
その取材の最中も、テレビ誌とかの取材カメラが俺達のこと撮ってて。
このドラマの注目度の高さが伺えた。
「大野さん…嵐のリーダーの初主演ってことで、プレッシャーでも感じてるんですか?」
「ええ…?…まあ、ね…」
笑いながら俺の持ってきたトランプをいじってる大野さんに、やっぱり覇気は感じられない。
「大丈夫なの…?」
スタッフさんも取材さんも居なくなった時に、こっそりと話しかけると、表情を変えずに大野さんは頷いた。
「おまえに迷惑はかけないから」
「え…?どういう意味?」
「別に…」
トランプを持つ手を、じっと見ている。
「…大野さん…?」
言い知れぬ不安みたいなものがこみ上げてきた。
翔ちゃんマネの言ってること…もしかして本当かもしれない。
大野さん、やめたがってる…?