第9章 ミント-before-
この7月からの連続ドラマ初主演が決まって、大野さんはなんだか役にはいってるせいか、最近無口に拍車が掛かってて。
喋らないのはいつものことだから、気にも掛けてなかった。
それに今はコンサートツアーの真っ最中で…
上り調子の今だから、やることなすこと当たって、本当に俺達は浮かれてた。
なのに…辞めたがってるって…
「いや、ほんと。おまえならなんか聞いてるかと思ったんだけどな…気にしないでくれ…」
そんなこと言われても…気になるよ…
ぽつんと楽屋のソファに座る後ろ姿を眺めた。
ドラマの台本を眺めてぼけっとしてる姿に覇気はない。
そんなのいつものことだし…
大野さんが台本を見たまま、テーブルに手を伸ばした。
タバコを探してる。
そっと手を握ってタバコを触らせた。
「…ありがと」
大野さんは俺の目をじっとみて、タバコのパッケージに目を落とした。
「なによ。元気ないのね」
「…そうかあ?」
「そんなに重い話なの?魔王って」
「ん…まあな…」
実はこの話が決まってから、俺は韓ドラの方の魔王を取り寄せて全部見てる。
そりゃ、あんな重い話だから…プレッシャーがあるのかもしれないけど…
ちょっと痩せた…?