第8章 ディープパープル
「あああっ…」
智くんが仰け反って俺にしがみついてきた。
「でかい声出すなよ…誰が来るかわかんねえだろ?」
潤が身を乗り出して智くんの耳元に囁くと、きゅっと口を引き結んでぶるりと智くんは震えた。
「翔くん、よく見ろよ…智は、俺のものだからな」
「潤…」
「ほら、見てよ…俺でこんなヨがってんだよ」
皮膚と皮膚がぶつかる音に合わせて、智くんの身体が揺れる。
その振動に頭がおかしくなりそうだった。
「あっ…あ…しょ、ちゃん…」
「智くん…」
逃げ出したい
なんで他の男に貫かれてる智くんを見なきゃいけないんだ
なんで俺じゃないんだ
なんで智くんの中に入ってるのが俺じゃないんだ
「き、すして…」
「え…?」
「キスして…ねえ…翔ちゃん…」
頭が真っ白になった
「智っ…のやろ…おまえはっ…俺のもんだっ…」
「違うっ…俺は、誰のものでもないっ…」
「智っ…」
「じゃあやめるよ?」
ぎりっと歯を食いしばって、智くんは潤を見上げた。
「潤と寝るの、もうやめるよ?いいの?」
「智…」
「嫌だったら…俺がどうしようと、黙って言うこと聞けよ…潤」
呆然とした顔で、潤は動きを止めた。
「俺は…誰のものにもならない…したいようにする…」
「智くん…」
「今は…翔ちゃんとキスがしたい…」
智くんが俺の顔を手で包み込んだ。
「ね、いいでしょ?翔ちゃん…」