第8章 ディープパープル
それが…何を意味するか…
昨日の晩、二人で何をしていたか
生々しく想像して思わず立ち上がった。
「…どうしたの?翔ちゃん」
「いや…メイク、行ってくる…」
鮮やかに、思い出した
局の廊下を歩きながら、気が遠くなっていく。
どうして…なんで…?
なんで忘れられない…?
一日、なんだかわからないまま時が過ぎた。
楽屋でもスタジオでも、智くんと潤の距離は近い。
智くんがなにかしようとすると、すぐに潤がエスコートするように先回りしてやってしまう。
智くんはいつも通りの微笑みを見せて、それを受けるんだ…
見ていられない。
なぜだか心が波立つ。
なんで…どうして…?
なんで目が離せない…?
全ての収録が済んで、打ち合わせも終わる。
なんだか疲れた。
ソファに凭れかかって天井を向いていると、潤が智くんの手を取ってソファから立ち上がらせた。
「さ、帰ろ?智」
いつから…呼び捨てにするようになったんだ…
胸を何かがよぎる。
智くんは何も言わないで、潤の身体に凭れ掛かるように歩き出した。
そっとその肩に潤の腕が回る。
…どこからどうみても…そう見える…
呆然と二人の背中を見送った。
なぜだか、握りしめた拳が痛い