第8章 ディープパープル
次の収録日まで、気分が晴れることはなかった。
いくら考えたってわからないことが多すぎて、俺の頭はパンク寸前だった。
一週間、悩んだ俺はなんにも解決がしないままお台場にあるテレビ局に向かった。
車でも走らせたら気分が晴れるかと思って、自家用車できてみたけど、なんにも変わらなかった。
もう5月も二週目だから、湾岸線から見える街に緑が増えた。
気候も暖かいし、風も心地良い。
なのに、目に入ってきた初夏の風景を楽しむことなんてできなかった。
前の晩、生放送だからいつも火曜は潤が先に入ってメイクを済ませてる。
だから、楽屋には潤が居るはずだ。
それを思うと、気分が重かった。
どんな顔して会えばいいんだ…
楽屋に入ると、潤の後ろ姿が見えた。
「はよ…」
声を掛けると、潤は振り向いてあいさつした。
「おはよ。翔くん」
拍子抜けするほど普通だった。
潤は読んでいた本に再び目を落とす。
スタッフさんやマネたちの喋る声だけが聞こえてくる。
いつもの定位置に座ると、タバコを取り出した。
火をつけようとライターを取り出した瞬間、楽屋のドアが開いた。
「あ、翔ちゃんおはよ」
智くんが入ってきた。
「え…なんで?」
「なにが?」
言いながら、俺の隣りに座る。
「なんでいるの…?」
「潤と一緒に来たから」