第8章 ディープパープル
「い…いい加減にしろよ…」
なんとか振り絞って出した声は、自分でもおかしいくらい震えてて。
他人のセックスなんて見たことがない。
テレビとか動画しか見たことがない。
なのに今、目の前で起こっているこれはなんだ。
生々しい音が耳に響く。
潤の喘ぐ声
智くんの荒い息の音
立ちすくんでいたら、潤の背中が動き出した。
「あ…」
智くんの首筋を、潤の唇が這っている。
そろりと智くんの手が潤の背中に回った。
潤を抱きしめながら、智くんは俺を見上げた。
「翔…ちゃん…」
手が、俺に向かって差し出された
「一緒に…」
ガツンと頭を殴られたような衝撃が来た。
下半身に急激に血液が集まるのがわかった。
なんなんだこれ…
「あぁ…っ…」
びくんと身体を震わせ、智くんが仰け反った。
「ここ…気持ちいいんでしょ…?智…」
聞いたこともないような甘い声で潤が囁く。
「あ…んっ…もっと…」
智くんの目が…覆いかぶさる潤を通り越して、俺を見つめた。
「もっと」
命令するような智くんの声
体中から汗が噴き出した。
「して…?」
気がついたら、自宅に居た。
どうやって帰ってきたのか、覚えてない。
玄関の鍵がかかっていることを確認して、そのまま俺はジーパンの中に手を突っ込んだ。
滾ったままの自分を握り込んだ瞬間、智くんの甘い声が脳裏に蘇って、俺は果てた。
なにが…起こったんだ…