第8章 ディープパープル
買ってきた酒を全て空ける頃には、もう酔っ払っていた。
酔っ払わないと、やってられなかった。
潤はべったりと智くんの隣に座って、離れない。
目線も身体も離さない。
智くんは迷惑そうな素振りを見せるでもなく、そんな潤をいつも通り微笑みながら見てる。
俺、要るの?
邪魔なんじゃねえの?
ぽつんとソファーに座らされて、床に座る二人をただ見てる。
なんなんだよこれ…
お願いされて、一芝居打ったのに…
一緒にって…言ったのは智くんだろ…?
明日は俺が休みだから、久しぶりに彼女に会うことになってる。
だから早く帰りたいのに…
なのに…なぜか帰れない
「翔ちゃん、お酒足りてる?」
「あ、もう俺帰る」
思い切って口に出して、智くんの反応を見た。
ゆっくりと俺から目を逸らしていく。
え…?どういう意味なんだよ…
ちらりと潤が俺を見た。
邪魔者は早く帰れと言っているみたいな目をしている。
昔から考えてることわかり易すぎだろ…
「潤ももう帰りな?彼女、待ってるんでしょ?」
「嫌だ。今日は泊まる」
「だって…客用のベッドなんてないよ?」
「一緒に寝ればいいだろ」
やっぱり…そういうことだよな…
いつの間にそんなことになったんだ。
「だめだよ。帰って」
「智っ…」
激昂した潤が、智くんを床に突き飛ばした。
「なんでだよ…なんでそんなこと言うんだよ!?」
馬乗りになって智くんの首を締め始めた。
「ちょっ…何やってんだよお前っ…」
慌てて潤を羽交い締めにした。