第8章 ディープパープル
智くんは別に驚いた風もなく、にっこり笑った。
「なんで?何の関係もないよ?」
あんまり、普通すぎて…
「…じゃあなんで、潤あんなにおかしいの?」
「おかしい?どこが?」
”試してみる?”
なぜか…あの時の智くんの声を思い出した。
「なにやってんだよ」
潤の威嚇するような低い声が聞こえた。
「なんでもない」
智くんが答えて家に上がっていった。
その肩を引き寄せると、玄関の叩きに立ったままの俺を、潤は一瞥した。
「あがれば?」
まるで、この家の主みたいな言い方…
じっとりと汗が出てきた。
俺…やっぱりなんか巻き込まれたのかも…
「勘弁してくれよな…」
別に軽蔑する気はないけど…
メンバー間で恋愛…しかも男同士のいざこざなんかどうしろっていうんだよ…
リビングに消えた二人の後を、一気に押し寄せた疲労感と共に追う。
”だから…シャクってあげようか?”
また思い出した声に、身体が勝手にブルッと震えた。
「じゃあ、飲もっか…」
リビングの紫のソファの前にはガラスのテーブルが置いてある。
そこにコンビニで買ってきたものを広げると、それぞれ缶を手に取った。
「乾杯」
「乾杯…」
カチリと缶を合わせると、俺と潤は一気にそれを煽った。