第8章 ディープパープル
「櫻井さん…」
マネが助手席の窓を開けて声を掛けてきた。
「ああ…」
「頼んますね…」
「そんなこと言われても…」
車に乗っていて気づいたけど、これって痴話喧嘩みたいじゃないか…
潤が彼氏で、智くんが彼女で…
その彼女が他の男を誘って、嫉妬してる。
そんな風に見える。
実際二人がどんな関係になったかなんて知らないけど…
なんか…俺、巻き込まれてるんじゃないか…?
「なんかあったら、電話してください。いつでも出れるようにしときますから」
「ああ…」
「チーフもそう言ってますんで…」
「わかったよ…」
コンビニの店内にいる二人を見ると、ため息を付いた。
「じゃ、行きますんで…」
そう言うと送迎車は静かに走り出した。
諦めて店内に入ると、二人の後を追う。
「あ、翔ちゃん。おつまみなんか買おうよ」
「ん…」
カゴには酒の缶がいっぱい入ってた。
初めて訪れた智くんの部屋。
先に入った潤は、勝手知ったるって感じでスイスイと部屋に入っていった。
「智くんあのさ…」
「ん?」
「こんなこと聞いて変に思わないでね?」
「なに?」
「潤と、付き合ってんの?」