第8章 ディープパープル
二本撮りの収録が終わる。
出演者さんに挨拶をして楽屋に戻ると、すぐに各々次の仕事の打ち合わせに入る。
いつも通りの楽屋の風景。
だけど違和感を感じる。
なんだか居心地が悪い。
打ち合わせが終わって周りを見渡してみれば、もう他のメンバーは帰る準備をしている。
潤を見てみると、ソファに深く座っていた。
じっと、智くんを見ている。
異様な雰囲気だったけど、何を聞いても答えないから、皆、遠巻きにそんな潤を見てる感じがした。
「じゃあ、お疲れ様」
そんな空気を一人だけ感じていないように、智くんはいつも通りで。
微笑んで立ち上がった。
潤も一緒に立ち上がると、智くんの肩を抱いた。
「潤…」
「行こ」
ちらり、智くんが俺を見た。
「…今日は翔ちゃんと約束…」
「嘘つくな」
吐き捨てるように言うと、智くんを強引に連れて行く。
「あっ…」
足がもつれて智くんが倒れ込んできた。
ちょうど進行方向に居た俺は、その身体をソファに座りながら受け止めた。
「翔ちゃん………」
なにか、小さな声で智くんが言った。
「え…?」
「お願い…一緒に…」
突然、智くんの身体が離れていった。
「いくぞ。智」