第8章 ディープパープル
メイクをしてしまったら、潤の顔色の悪いのは粗方見えなくなった。
でも、見る人が見たらわかる。
メイクから帰ってきてもやっぱり潤はスマホを見つめたままで。
「おはよー」
楽屋にニノと雅紀が入ってきても目もくれない。
「おはよ?潤くん?」
「じゅーん…どうしたんだよ?」
二人が話しかけると、やっと顔を上げた。
「ちょ、どうしたの!?潤くん!?」
「おまえ、どうしたんだよ…その顔…」
やっぱりこの二人には、潤の顔色が悪いのはわかってしまう。
潤はうるさそうに手を振ると、そっぽを向いた。
「別に…ちょっと疲れてるだけ」
「え?だってオフだったんでしょ?具合でも悪いの?」
「別になんでもないったら…」
二人は顔を見合わせると、俺の方をちらっと見た。
俺もわけがわからないから、首を横に振った。
あきらめたように二人が連れ立ってメイクに行くと、楽屋は変な空気のまま、時が止まったようになった。
暫くして、智くんが楽屋に入ってきた。
「おはよ」
「あ、おはよ」
その瞬間、潤が立ち上がった。
「大野さん!」
「あ、潤おはよ」
智くんは潤をスルーして、俺の向かいのソファに座った。
そのまま潤を見上げた。
「なあに?潤」
「…なんでもない…」
スマホをポケットに入れると、潤は崩れるようにソファに座った。