第8章 ディープパープル
訳がわからない。
なんだって俺と約束なんて…
断りたいなら、そんな顔すればいい。
なのに…
なんであんな笑い方…
あんな顔、初めて見た。
次の火曜日の収録は、俺が先にメイクに入ることになって一番に着いた。
いつもなら火曜は潤が先なんだけど、急に変わることになった。
メイクを済ませて楽屋に戻ると、潤が来ていた。
「おはよ。次どうぞ」
そう声を掛けてみたけど、潤は動かない。
「潤?」
じっとスマホを見て、身じろぎもしない。
「潤ってば!」
「えっ…」
顔を上げた潤は、俺を見るとふらりと立ち上がった。
「ごめん…メイク行ってくる」
「ちょ…待てよお前…」
ほんの数日…
この前の金曜日から、ちょっとしか経っていない。
なのに潤はげっそりと痩せていて。
顔色が真っ青だった。
「おまえどうしたんだよ…」
「…なにが…」
「なんかあったのか?顔色が悪い」
「別に…」
「じゃあ体調でも悪いのかよ」
マネージャー達が何事かとこちらを見ている。
「なんでもない」
俺の手を払うと、潤は楽屋を出ていった。
「ちょっと…あれ、どうしたの?」
潤のマネージャーが呆然と俺を見てた。
「いえ…金曜から、松本さんオフだったんです…今朝迎えに行ったらあんなふうになってて…」