第8章 ディープパープル
「あ、ねえ。大野さん、この後飲みに行かない?」
ニノが話しかけると、智くんは手を振った。
「だめ。今度な」
「ええーっ…もう、なんでよ!何で俺とは…」
「あーあー…わかった。俺が一緒に行ってやる」
雅紀がニノの肩に手をおいてにっこり笑った。
「あんたの顔なんか年中みてんだから」
「あっ…傷ついた。でもそこがいい」
「だから、あんたねえ…」
またじゃれ合ってる二人を尻目に、智くんはスマホの画面を見つめてる。
向かいに座る潤も、ずっとスマホの画面を見てる。
さっきは様子がおかしかったけど、今は普通の潤に戻ってる。
楽屋の中には、マネージャーやスタッフさんがいてガヤガヤしてる。
「おーい。車の準備できたぞ。下降りろ」
チーフが楽屋に入ってきて、俺達は荷物をまとめて立ち上がった。
立ち上がった瞬間、スマホが膝から落ちていって、ソファの下に入ってしまった。
「あちゃ…」
床にしゃがみこんでスマホを取っていると、隣に座る智くんが立ち上がった。
ふと見ると、その隣には潤が立ってる。
小さな声で喋ってるけど、しゃがんでる俺に会話が聞こえてきた。
「今日、俺んち来てよ」
「…やだ…」
「じゃあ、大野さんち行っていい?」
潤の手が、智くんの腰に回った。
そのまま二人は楽屋を出ていった。
「…なんだよ…今の…」