第8章 ディープパープル
こんな仕事してるからには、ついて回ることだ。
だけど、俺達には人間として、男としてしあわせになる権利はないっていうのか…
「もう…嵐やめちまおうかな…」
「何言ってんだよ…嵐やめたら、俺達にはなんもできねえよ…」
「まあな…」
人生の半分以上を嵐として過ごしてる。
そんな俺達が、今更普通の人生なんて歩めない。
わかってはいるけど、時々なにもかも放り出したくなる。
「翔くんはいいよ…俺なんか…」
「おまえは貞操帯でも付けてもらえ」
「はあ!?」
「節操ないなんて思われたら損になるだけだぞ」
「だって…」
「だって、なんだよ」
「やばいんだも…あの子、上手いんだもん」
「は?セックスが?」
「うん…」
ぐしゃっと前髪をかきあげると、不貞腐れた。
「彼女は?なんて言ってんの?」
「…別に…」
「別にって…別れるとかそんな話になんねえの?」
「まあ…俺がこんな男だってわかってる、とは言ってた」
「は…すげえな…」
「俺、惚れられてるもん」
「そのうち捨てられるぞ」
ふっと潤はシニカルに笑った。
「芸能人なんて、こんなもんだろ?」
「まあね…」
モテたい、遊びたい。
だからこんな商売やってるんだ。
突き詰めたら、みんなそうだろう。
一皮剥いたら、人間なんてそんなもんだ。
みんな、おんなじようなもんだろ。