第7章 グレイ scene5
ガタンっと大きな音が洗面所から聞こえた。
慌ててベッドから降りて向かうと、洗面所で翔が倒れてた。
「翔っ…」
「さ…わんな…」
「ごめん…本当にごめん…」
身体に触れても、抵抗できるだけの力がないみたいで…
そのまま身体を抱き上げて、寝室のベッドに身を横たえた。
蒼白の頬を撫でると、髪を梳いた。
「俺に触れるな」
「翔、ごめん…言って?何かしたいことあるなら…」
「帰る」
「翔…」
「家に帰るっ…」
ぼろぼろと涙を零しながら、翔は身を捩った。
「だめだよ…寝てないと…」
「なんでっ…」
腕で顔を隠してしまうと、翔は叫んだ。
「なんで俺が潤を好きだって信じてくれないんだよっ…」
悲痛な叫び…
「俺には潤しか居ないって言ってるだろ!?なんで…なんで信じてくれないんだよっ…」
「翔…ごめん……ごめん……」
触れたら、怒りで散らばってしまいそうな身体を無理やり抱きしめた。
「離せっ…触んなっ…」
もがく身体をぎゅっと抱きしめていたら、すぐに力が入らなくなって脱力した。
「俺がそんなに信用出来ないなら、別れようよ…潤…」
「違う…違うんだ…」
ずっとずっと好きで…やっと手に入れた恋人。
それが、こんなに俺の心を乱すなんて…
こんな気持ち知らなかった
こんなに苦しくて、醜い感情が俺の中にあるなんて…