第7章 グレイ scene5
「なんで…?」
気がついたら翔に抱きしめられていた。
「なんでおまえが泣くんだよ…」
「ごめん…翔、ごめん…俺…」
ぎゅっと抱かれる腕に力が入る。
「俺は…翔のこと…」
「わかった…もう…わかったから…」
愛してるんだ
自分が一体誰だったかもわからなくなるくらい
「お願いだから…信じてくれよ…」
「信じてるんだ…わかってるんだ…だけど…俺はっ…」
翔の身体を強く抱きしめた。
「俺は、こんな愛し方しかできないっ…」
ありったけの力で翔を抱きしめると、身体を離した。
「傷つけることしか…できない…」
「潤…」
「捨てて…?」
「え?」
「俺から別れることはできないから…翔が俺を捨ててよ」
「何言ってんだよ…」
「このままだと…俺、翔を殺す…」
「潤っ…」
「だからその前に…」
思いっきり頬を殴られた
「ばかやろうっ…殺される前に、俺が殺してやるっ…」
無自覚…無自覚の反対ってなんだっけ…
「翔ちゃん。ねえ、これ見て」
雅紀がスマホを翔に見せてる。
顔を覗き込むと、雅紀はふふっと翔に微笑みかける。
「わ…これ、芸能人じゃんか…」
「ね。街で偶然芸能人みかけちゃったんですよ…」
「すげえな…この写真、俺にもくれよ」
「え?でもぉ…」
ニノがソファに寝転がりながら、呆れた声を出す。
「肖像権の侵害ですよー」
雅紀は翔の肩に寄りかかりながら笑い始めた。
サラサラの髪が、翔の首筋を撫でていく。
くすぐったそうに笑う翔は、俺の顔を見た。
そして、にたりと笑った
無自覚の、反対…
それは、俺の恋人―――
END