第7章 グレイ scene5
それから、一体何をしてたのか記憶がない。
気がついたら、ベッドの上にはボロ布みたいになった翔が横たわってた。
「ごめん…翔…」
止められないんだ…
濁流のように俺を飲み込んでいくこの感情。
一度煮えたぎってしまったら、止めることができないんだ。
体中、細かい傷ができて…
手首にはぐるりと痣がある
翔の身体を抱いて、風呂に入ると全身を清めた。
だけど、翔は目を覚まさない。
次の日、昼近くになるまで目を覚まさなかった。
「痛っ…」
ベッドに半身を起こすと、翔は呻いた。
「翔…」
手を伸ばすと払われた。
「触んな…」
「ごめん…ごめん、翔」
「触んなって言ってんだろ!?」
自分の身体を抱え込むようにして、ふらりとベッドから立ち上がる。
「翔…」
「なにも聞きたくない」
よろよろと寝室から出ていくと、部屋がしんとした。
翔の残した香りだけが、俺に纏わりつく。
「違う…違う…違う…」
こんなこと…したかったわけじゃない
こんな風になりたかった訳じゃない
ただ愛しているだけなのに
ただ俺の傍に居てほしいだけなのに
なんで言うことを聞かない
俺の心…
俺の、独占欲―――