第7章 グレイ scene5
それからも…
翔ちゃんの様子はどんどんおかしくなっていった。
心がここにない。
そんな様子を、メンバーは恋煩いだと言った。
違う…違う…そんなんじゃない…
「ねえ、翔ちゃん。颯くんとなんかあったの?」
「え?」
二人きりになったとき、突っ込んで聞いてみた。
「べ…別に。なんにもないよ」
「あの人まだ翔ちゃんの家に居るの?」
「うん…」
群馬から上京してきて、ずっと颯くんは翔ちゃんの家に居候してるってことだった。
「…働いてるの…?」
「え…さ、さあ…」
働いてないんだ…
翔ちゃんに集ってるんだ。
誤魔化すように、翔ちゃんは外を見た。
その首筋…
「なにそれ…」
赤い…痣…
「え…?」
服で隠れるギリギリの場所に赤い痣があった。
立ち上がって衿を掴んだ。
ぐいっと引っ張ると、それは胸に掛けていくつも散っていた。
「なにこれ翔ちゃん…」
「なんでもないっ…」
すごい力で振り払われた。
ぎゅっと身体を丸めるようにして、翔ちゃんはそれを隠してしまった。
「ねえ…翔ちゃん…まさかそれ、颯くんに…」
「ち、違うっ…」
必死で否定すればするほど、俺にはわかってしまった。
翔ちゃん…颯くんと…
頭の芯がキーンと音を立てた。
「翔ちゃん…」
「やめて…もう、なんでもないから…」
―――なんで…愛した
「なんで…?翔ちゃん…」
「違うって言ってるだろっ…」
なんで、同じ顔を愛するんだ―――