第7章 グレイ scene5
「この人…誰なの…?」
多分、いつも俺が接してるのは、翔ちゃん(右)だろう。
(右)は、気まずそうな顔をして(左)を見た。
「この人…俺の親戚で、櫻井颯…」
「えっ…親戚?」
翔ちゃんのお父さん側の親戚と言うことだった。
でも、いくらなんでもこんなにそっくりなんて…
颯という人は、知らん顔でコーヒーを味わってる。
目の前に俺がいるけど、そんなの知らないって顔してる。
「…俺の双子の兄貴なんだ…」
翔ちゃんは、泣きそうな顔をしてる。
「え…?え…?どういうことなの?」
生まれたとき…翔ちゃんの家は大変な借金を抱えていたそうだ。
二人も育てられない。
途方に暮れた両親は、生まれた二人の男の子うち一人を養子に出すことにした。
それが、この櫻井颯というひと…
だから、修くんと翔ちゃんは凄く年が離れてるんだって。
借金返済の目処が立ってから、翔ちゃんに兄弟をって。
ご両親はそう思ったんだそうだ…
「最近まで、俺も知らなかったんだ…群馬から颯が上京してきて…初めて知った」
翔ちゃんがうつむくと、颯という人は翔ちゃんの膝に手を置いた。
ビクリ、翔ちゃんの身体が強張った。
「翔…なにも気にすることないだろ…?」
声までそっくりだった。