第7章 グレイ scene5
心臓のバクバクが暫く止まらなかった。
いや、待てよ。
翔ちゃんは今、仕事で海外に行ってるはず。
こんな所に居るはずがない。
見間違いだ。
そう思ったら、やっと心臓は落ち着いた。
なのに…
福岡で…
コンサートで訪れた福岡で…
俺はまた、信じられない物を見てしまったんだ。
深夜、寝静まったフロア。
焼酎を飲んでて、氷が欲しくなった俺はホテルの廊下に出た。
ルームサービスで頼めば良かったんだけど、夜中だし悪いと思って、自販機に向かった。
ふと見ると、翔ちゃんの部屋の前に誰か立ってた。
翔ちゃんだった。
何してんだろ。
こんな夜中に。
そう思って見てたら、翔ちゃんの部屋のドアが内側から開いた。
そこから出てきたのは、翔ちゃんだった。
それから気をつけて翔ちゃんを観察してたら、送迎を断ってる日が頻繁にある。
つきあいもどんどん悪くなって…
みんな、彼女でもできたんだろうって言ってたけど…
違う…
翔ちゃんには、なにかとんでもない秘密がある
俺にはわかるんだ。