第7章 グレイ scene5
水仙は…
己に見とれたナルシスが化身した姿だという
彼には秘密がある。
「じゃあお疲れー」
「お疲れ様でしたー」
いつもの5人での仕事終わり。
事務所の送迎を断って、彼は一人で帰っていく。
「大野?どこ行くんだ?」
「…今日、送りいいや」
訝しがるマネージャーを振り切って、俺は局の前でタクシーを捕まえる。
すごい急いでもらって、辿り着いたそこは…
「あっ…」
慌てて自分の姿を隠す。
夜の闇に紛れてじっとしてると、二人はマンションに吸い込まれていった。
慌てて後を追って走っていく。
オートロックのドアが締まる寸前、追いついた。
「翔ちゃんっ…」
驚いてこちらを振り返った2つの顔は…
同じ顔だった
「どういうことか…説明してくれる…?」
翔ちゃんの部屋に、初めて通してもらった。
目の前のローテーブルには、コーヒーカップが3つ。
そして俺の向かいのソファには、櫻井翔が二人居る。
「今まで黙ってて…ごめん…」
翔ちゃん(右)は、俺に頭をさげた。
翔ちゃん(左)は、涼しい顔をしてコーヒーカップを手に取った。
ずずっとすすると、余裕の笑みを浮かべた。
あれは三ヶ月前…
たまたま買い物に出た俺は、新宿の雑踏で信じられないものを見た。
「翔ちゃん…?」
両手に、男を抱えてフラフラと歩いてる翔ちゃんだった。