第7章 グレイ scene5
部屋に戻ると、潤はスマホを持っていじってた。
「なに?彼女?」
「いねえよ、んなもん」
笑いながら潤はスマホを置いた。
ラグの上に置いたテーブルにマグカップを置くと、俺達は勉強を始めた。
「…ねえ、カズのお兄さんって、うちの会社に就職決まってたよね?」
「うん。そうだよ」
潤は大きな会社の一人息子で。
すごい偶然なんだけど、翔にいはその会社を第一志望にしてて、内定を貰っていた。
やりたかった仕事に就けると、すごく喜んでいた。
「ふうん…」
カチカチカチと潤はシャーペンの芯を、出したり引っ込めたりしてる。
「どうしたの?」
潤が俺を見た。
見たこともない、目…
冷たいのか熱いのか、分からない。
こんな目、初めて見た。
「潤…?」
ぱたりと潤の手からシャーペンが落ちた。
その手が、俺の衿を掴んだ。
「えっ…何…?」
ぐいっと持ち上げられて、俺は膝立ちになった。
「ちょ、やめて!潤っ…」
腕で押し返そうとするけど、潤はびくともしなかった。
「…知らなかったよ…カズにそんな趣味あるなんて…」
「なん…だよ…」
俺をベッドに投げ出すと、潤はスマホを取り出した。
無言で画面を俺に向けた。
「あっ…」
そこに映っていたのは、俺とスーツを着た翔にいのキスしてる姿だった。