第7章 グレイ scene5
玄関のドアを開けると、ドアキーパーが掛かってた。
「……おーい……」
勘弁してくれや…
頭にきて、ガンガン玄関ドアを引っ張った。
「てめーこら、いい度胸じゃねえか!くおらっ!出てこいや!」
でかい声を張り上げながら、玄関ドアと戦ってたら、奥から潤が慌てて出てきた。
「ちょっ…翔くんっ…でっかい声ださないでよっ…」
「ああっ!?てめえがこんなことすっからだろうが!開けろ!」
「やだ!今日は帰って!」
「帰るまで、ずーっとここで騒いでやる」
ドアの隙間からじとーっと潤を見つめたら、慌てた顔をして潤はドアストッパーを解除した。
「最初からそんなもん掛けとかなきゃいいんだろうが…」
玄関に入るなり、潤を抱き寄せた。
「は…離してっ…」
「離さない」
「やだっ…翔くんなんかっ…」
「…俺なんか…?なんだよ…」
「う…」
黙りこくる潤を、ぎゅううっと力を入れて抱きしめると、そのままシクシクと泣き出した。
「…どうしたんだよ…」
「なんでもない…もん…」
「なんでなんでもないのに泣くんだよ…」
「かふんしょー…」
「違うだろ?潤…」
身体を離して、潤の頬を流れる涙を手で拭った。
「言ってみ?潤…」