第7章 グレイ scene5
「翔くんっ…」
消えてしまいそうだと思った。
「あっ…」
床に翔くんを押し倒した。
「なにするの!?やめてっ…」
こうでもしてないと、翔くんが…
居なくなりそうだと思った
「翔くん…俺を…潤の代わりにして…?」
「え…」
「お願い…翔くんまで居なくなったら俺…」
「さ、智くん…待ってっ…!」
抵抗する身体を、ぎゅっと抱きしめた。
「翔くん…俺は、どこにもいかないよ…」
「智くん…」
「だから…泣いていいんだよ…?」
一瞬、翔くんの身体が強張った。
「智くん…」
「翔くん…」
「智くんっ…あああっ…」
翔くんは俺にしがみついて泣き出した。
「智くんっ…怖いよおっ…」
「翔くん…」
「潤が…潤が居なくなったらっ…俺っ…」
「…俺が居るから…ずっと側にいるから…」
「智くんっ…智くんっ…」
ぎゅっと俺にしがみつく腕に力が入る。
翔くんの身体を、それに負けない力で抱きしめた。
「俺が居るよ…?翔くん…俺が居るから…」
「ひとりに…しないでぇ…潤…」
「大丈夫だよ…翔くん…ね…俺が居るから…」
翔くんは、泣いて泣いて…
ちゃんと息ができないくらい泣いた
そんな翔くんを、俺はずっと抱きしめていた。
長い長い時間、そうしていた
泣き止んだ翔くんは、俺を見上げて…
少し笑った
「ありがとう…智くん…」