第7章 グレイ scene5
点滴の落ちるのをずっと眺めていた。
潤は目を覚まさない。
先日見た、青白い顔のまま眠ってる。
布団から出てる手をぎゅっと握った。
「早く…戻ってこいよ…潤…」
少し、手は冷たい。
やつれた頬をそっと撫でた。
「もう…大丈夫だから…ニノも、ちゃんと雅紀が支えてる…」
病室のドアが開いて、チーフが顔を出した。
「大野、もう行くぞ」
「うん…もうちょっと…」
「…早く、しろよ…」
チーフはそっと、俺を一人にしてくれた。
「…潤…?」
また、頬を撫でて、髪を梳いた。
腹の底から、笑いがこみ上げた
「くっ…くっ…」
おかしくて、おかしくて…
だってこんなに思い通り事が運ぶなんて思わなかったから…
「潤、早く戻ってこいよ…でもな…」
ぐいっと顎を上げると、顔を近づけた。
「おまえの一番大切な人は、もう戻ってこないよ」
自分のやってきたことのツケ、払えばいい
「……翔は、俺のものだ」
おまえが翔くんを泣かしていた間、どんな思いで俺が見てたと思う?
おまえがニノを抱いていた間、翔くんが他の男に抱かれてる間…
俺がどんな思いをしていたと思う?
「早く…戻ってこいよ」
その頃には、お前の居場所はどこにもないけどね
END