第6章 ショコラ scene4
「わーっ!もうこんな時間!ちょっと!翔ちゃん!」
「なぁんだよ…もう…」
「ね、ね。服装、これでいい?」
「いいに決まってんだろ…おんなじとこで買ってるんだから…」
「髪の毛、これでいいかな?」
「大丈夫だって、何回言えばいいんだよ…」
今日は、2月11日。
世田谷の俺の実家に、雅紀と二人で遊びに行く。
まあ…遊びにっていうか…
ま、そういうこと。
「あーもう…手汗ハンパねえ…」
「そうか…じゃ、ちょっと手ぇ、貸してみ?」
「ん?」
ジャケットの裾で手汗を拭くと、雅紀は俺に手を差し出した。
「ん」
雅紀の手を取ると、引き寄せてキスをひとつ。
「んぅーっ…ちょ、何すんの!」
「え?キス」
「もっ…もうっ…こんなときに!」
怒ってる雅紀の手を握りしめながら、更に俺はキスをした。
リビングに、ちゅっとしあわせな音が響く。
「も、もう…わかったから…翔ちゃん…」
真っ赤になって雅紀は俺の身体を離した。
「え…?」
「さ、いくぞ」
「……え?これ…」
「お守り」
雅紀の左手の薬指…
昨日できあがってきた、指輪を嵌めた。
「翔ちゃん…」
表からみたら、ただのシルバーリングだけど…
雅紀のは内側に赤のラインが入ってる。
「さ、行くぞ」
リビングのドアに歩きだしたら後ろから抱きつかれた。