第6章 ショコラ scene4
「ありがとう…翔ちゃん…」
「ん…落ち着いた?」
雅紀はぐりぐりと俺の肩に額を擦りつけた。
「うん…落ち着いた!」
「そっか。じゃあ、行くぞ」
「待って!」
雅紀は俺の左手を取った。
「これ、おそろい?」
「そうだよ」
まじまじと俺の薬指にある指輪を見た。
俺のも、見た目はただのシルバーリングだけど、内側に緑の細いラインが刻んである。
いつも…仕事で離れていたって、お互いが一緒に居る
そんな願いを込めて作ったリング…
「付けてない時は、チェーン買っといたから。首にぶら下げとけよ?」
「…うん…うんっ…!」
勢い良く頷く。
こういうとこが…本当にかわいいんだよなぁ…
「あっ!ちょとまってて!」
そう言って雅紀はキッチンに駆け込んでいった。
戻ってくると、手には小さな箱を持っている。
「本当はバレンタインに渡そうと思ったんだけど…」
ガサガサと包みを破って箱を開けると、中から色とりどりの小さなチョコレートが出てきた。
「…ハッピーバレンタイン…」
雅紀が口に一つ、チョコレートを咥えて目を閉じた。
そっと抱き寄せて唇で取ると、甘い甘いチョコレートの味が口の中に広がった。
「…チョコレートだけじゃなくって…俺のこと、貰ってくれる?」
「…あったりまえだろ…」
雅紀…
「うわーーーーん…」
「ああ…もう、頼むから泣き止んでくれよ…」
「だぁってぇぇ…」
雅紀…俺さ…
「鼻水垂れてんぞ…」
「翔ちゃん拭いてよ…」
「バカ、運転してんだぞ!?」
一生
「拭いてくれるまでこのままにしとくもん」
「あのなぁ…」
「信号赤!ほら、拭いて?」
「わかったよ…」
おまえのこと、しあわせにしていくから…
「ずびーっ…」
「もう…頼むよ?」
「わかってる。きっちり挨拶するから…」
ふんっと意気込む頬にキスをした。
照れくさそうに笑うと、雅紀も俺の頬にキスをくれた。
乗り越えていこう
俺達なら、きっと前を向いて乗り越えていける
微笑んだ雅紀の手をぎゅっと握った。
左手に、キラリと光る
シルバーの輝き
「さあ、行こう」
【END】