第6章 ショコラ scene4
テキパキと片付けはしたものの…
やっぱり雅紀は元気がなかった。
「あのさ…」
「うん?」
「潤のこと…」
「…うん…」
雅紀はマグカップを両手で持って、俯いた。
「気にするなって言うのは、雅紀には無理かもしんないけどさ…」
「…うん」
「行長先生も仰ってたろ?気にしてないフリすんのも優しさだって…」
「わかってるけどさ…」
雅紀は、潤のこと寂しがらせたのかって気にしてるんだ。
「…これはさ、潤が乗り越えなきゃいけないものなんじゃないかな…」
「え…?」
「行長先生の奥さんが仰ってたんだ。俺たちにはね、一人ひとり守護がついてるんだって」
「守護って…守護霊のこと?」
「まあ、そんなもんだろ。その守護の人はな、俺達に乗り越えられない課題は出さないんだって」
「課題…」
「そう。だからな、これは潤が乗り越えていくことであってさ、俺たちにできるのは見守ることなんじゃないかな…」
そっと雅紀の頭を引き寄せた。
こつんと頭をくっつけると、ふふっと笑いがこみ上げた。
「きっとさ、俺達になんでもないふりしろっていうのも、守護の出した課題なのかもしれないな」
魂の命題。
きっとこの先、俺達はいくつも乗り越えていかなきゃならないんだろう。