第6章 ショコラ scene4
ニノが頭を抱え込む横で、智くんは笑いを堪えて肩を揺らしてる。
雅紀は、まだ湯呑みの底を見つめてた。
それから先生に眠っている潤を預けて、とりあえず俺たちは家に帰ることになった。
疲れ切っていた俺達は、あいさつもそこそこに辞去させてもらった。
また明日、様子を見に行こう。
「翔ちゃん…」
ニノと智くんとは別々の車で送ってもらっていた。
セダンは、いつも乗る車とは違うからシートが心地よくて寝そうだった。
「ん?どうした?」
ぎゅうっと雅紀は俺の手を握ってきた。
「…わかったから…気にすんな…」
ちょっとだけ泣きそうな顔をしてたから、手をつかみ返して引き寄せた。
肩と肩がぶつかって、俺達は寄り添う格好になった。
伝わってくるぬくもりは、やっぱり安心する…
「俺も…声が聞こえたんだ」
「え?」
「でも、あれが潤の声だったのか、純一郎さんの声だったかは、わかんなかった」
「そっか…」
そのまま、家に着くまで無言で車に揺られてた。
久しぶりの我が家に着くと、玄関で二人で立ちすくんでしまった。
なんだか、現実だったのか夢だったのか…
福岡に行く前から、時間が経ったのかどうかもよくわからない。
そのくらい、玄関はいつもの風景だった。