第6章 ショコラ scene4
「なんで…そんなの呼び起こすんだろ…」
雅紀も湯呑みの底を見ながらぽつりと呟いた。
「そうですね…それが魔のエネルギーになるから…わかりやすくいうと、マイナスの感情が大好物なんですよ」
「えっ…」
「だから最大限、憑坐からそういう感情を引っ張り出そうとするんでしょうなぁ…」
「…憎しみの上に、さらにマイナス感情を乗っけて、倍率どーんってとこですかね…」
ニノが言うと、先生は苦笑いした。
「うまいことおっしゃいます。まあ、そういう理屈ですので、松本さんが普段から寂しいと思っていたから、今回のことが起こったわけではないということだけ理解してください」
「いや、それはわかったんですがね?先生…」
ニノは湯呑みを置いてテーブルに身を乗り出した。
「じゃあなんで潤くんが取り憑かれたんですかね?」
「名前…ですかね…」
「ええっ!?」
「”じゅん”という響きが、白かおみちさんを反応させてしまったのでしょう」
「た…たったそれだけ!?」
「そういうものです。彼らに理屈なんてないんですから」
ずずずっと先生はお茶を飲みきると、立ち上がった。
「二宮さんだって、黒に好かれた理由は単純ですよ?」
「えっ?」
「波長があったから。それだけです」