第6章 ショコラ scene4
「そんなっ…申し訳ないですからっ」
「いえ…櫻井さん、これは主人からも申し遣っておりますので…」
なんでもツアーが終わるまでは行長先生のスケジュールを空けることはできなかったとのことで…
でも、今朝の話を聞いた先生はどうしてもこの状況をほうっておくことができないということだった。
「私も少しでしたらお役に立てるかと思いますから、ね?それに副社長から正式にご依頼いただきましたから、これは行長の仕事です。だから安心して任せてください」
しっかりと背筋をピンと伸ばして話す奥様は、いつも見る柔和な雰囲気ではある。
でもどことなく纏っている空気が違う。
ふと後ろを見ると、智くんが立っていた。
奥様をみてちょっと呆然としてる。
「どうしたの?」
「いや…ねえ、奥さん今日なんかオーラの色違う」
「あら、大野さんにはわかっちゃうのね」
そういっていたずらっぽく笑った。
「今日は主人もついてきてますから…」
それがどういう意味なのかわからなかったけど、とりあえずこれで俺たちは少し息がつけた。
慌ただしく開演前のコールが来て、奥様は隣の小部屋に入っていった。
護符はあまりやりすぎると潤が動けなくなるそうで、奥の部屋の入口に二枚ほど増やしておくだけにした。