第6章 ショコラ scene4
またいつもの如く注意点を言われて、慌ててメモに取った。
しかしそのどれもが、コンサート期間中では難しいものばかりだった。
「皆、ちょっといい…?」
控室に戻って、潤がまだ来ていなかったから3人を呼んで行長先生の話を伝えた。
「猫鬼…って元は猫だったってこと?」
「そうなんだろうな。猫を呪いの道具にするって言ってた」
「で、古くって、もしかして術を掛けた人が死んじゃってるかも知れなくって…」
「その猫鬼は本来の目的を忘れてるって…これ、大丈夫なの?」
ニノが眉を潜めた。
雅紀も不安げに俺の腕をぎゅっと掴んだ。
「あー…だからか…」
智くんが顎に手を当てた。
「潤に尻尾生えてるように見えた…」
「えっ…」
「猫だったんだ…あれ…」
どうやら智くんには潤の身体にぴったりと重なる猫の姿が見えていたようだ。
「…どんなだった?」
「いや…珍しく俺もはっきりとは見えないんだ…ああいう悪意のあるのって、俺、ちゃんと見えないみたい」
「悪意…」
ごくりと雅紀がつばを飲んだ。
こいつは見えない分、何かを感じ取ってるんだろうか。
「お手上げでしょう…我々ではどうにもなりませんよ…」
珍しくニノが弱りきった声を出した。