第6章 ショコラ scene4
ドームに向かうジャンボタクシーの中は、いつもどおり無言だった。
だけど、後部座席に座る智くんとニノはなにやらコソコソと喋ってる。
雅紀は俺の手を握って、じっと潤の座る方を見つめてる。
「そんなに変なかんじなの…?」
「うん…なんかとってもヤバイ感じがする…」
「黒とは全然違うの?」
「そうだね…あの子は無邪気だったけど、潤には邪気…そう!邪気みたいなのを感じる」
ボキャブラリーがあまりないから、どうやって言い表していいか悩んでるのか…あまりサクサクとは言葉が出てこないが、言いたいことはわかった。
悪いものってことなんだろうな…
俺と雅紀が付き合ってからは、運良くそういうのには当たらなかった。
生霊の美々子さんはそりゃアレだったけど、結局のところ俺達のファンだったわけだし…
しかも人じゃないってことは…黒に人の言葉が通じなかったように、一筋縄じゃいかないってことだよなあ…
「雅紀…怖い…?」
「うん…」
雅紀はちょっとだけうつむいたけど、すぐ顔を上げた。
「でもね。大丈夫。俺、頑張るから」
何を頑張るのかはわからなかったが、雅紀は美々子さんの一件以来、ちょっと強くなったようだった。
「…わかった…とりあえず、お前が取り憑かれないように、気をつけような」
「わかった」
きゅっと唇を引き結んだ。