第6章 ショコラ scene4
「今年も食には困らなさそう」
「ふふん…俺んとこの実家が中華屋でよかった?」
「ううん…俺の恋人がおまえで良かった」
「え?」
「だって、おまえはどこ食べても旨いからなあ…」
「ちょっ…しょ、翔ちゃんっ!新年早々何いってんの!?」
「え?別に変なこと言ってないだろ?」
「へ…変なこと言ってる!」
もおってぷりぷりしながら祝い箸を割った。
「いただきまーす!」
正月らしく日本酒をちびちびやりながら、おせちを味わった。
「んー…おこたが欲しいねえ…」
「でもあれは、人間をダメにするからな…」
「そうだよね…おこたがあるばっかりにうたた寝ばっかりして、小説書けないって人の話よく聞くもん」
「ご飯食べた後は絶対に入っちゃだめだよね…入った瞬間に目覚めたら深夜だぜ?」
「それ、めっちゃ危険だよね…」
「そうだな…タイムワープしてるようなもんだからな…」
雅紀と目があってふふっと笑いあった。
「まあまあ、ひとつ…」
「はあい…ありがとう」
雅紀の手にはちいさなお猪口。
そこにぬる燗の日本酒を注ぐとくいっと雅紀は飲み干した。
「いいお正月だねえ…」
「だな…」
静かに久しぶりのふたりだけの時間が流れた。