第6章 ショコラ scene4
今年はすぐに福岡でのコンサートがあるから、旅行も帰省もなしで、ゆっくり冬の休暇を家で過ごすことにしてる。
多少、自宅でやる仕事もあるしね。
福岡が終わったらちょっとだけ長い休暇が貰えるから、その時までいろいろ我慢だ。
「ああ~ほんっとなんも考えなくていいお正月って素晴らしいねっ!」
雅紀は紅白の司会という大役を終えた後だから、本当に清々した顔をしている。
よっぽど堪えたんだろうなあ…
後の評判とかそういうのは抜きにして、本番中から謝りっぱなしだったし…
でもやり終えたって事が何よりも凄いし、最後泣いちゃったけど、立派だったと俺は思ってる。
バラエティのMCとは相当質が違うし、なによりも視聴率が半端ない番組なんだから。
司会を引き受けて、チャレンジして大過なく終えるっていうことだけでも俺は凄いと思ってる。
「でもなんかプレッシャーないと張り合いないだろ?」
「ええっ…」
雅紀は顔を引きつらせて黙り込んでしまった。
「そういうの…もういいわ…」
げんなりしながら、お重の蓋を開けた。
「おおお…すげえ。金箔…」
「親父はりきりすぎだっつーの…」
焼き物のエビや黒豆に金箔が乗っかってる。
他の具材もなんか高そうなのばっかりだった。