第5章 こひくれない
「翔くん…いいの…?」
「ああ…」
潤の隣に座ると、すごい勢いで潤が抱きついてきた。
「うわっ…」
「ありがとう!ありがとうっ…翔くんっ…」
「ああ…」
「嬉しい…」
「うん。良かった…」
そっと腕を回して潤を抱きしめると髪を撫でた。
そうやってると、本当に心が凪いで…
暫くそうやって抱き合っていたら、潤が身体を離した。
「翔くん…」
「ん…?」
「ちょっと、待ってて」
そう言って荷物を持って立ちあがった。
そのまま寝室に入っていって潤は出てこなかった。
そっと覗くと、誰かと電話していた。
もしかして…彼女と電話してんのか…?
じっと様子を伺っていると、潤の声が震えてるのがわかった。
泣いているのか…
本当は抱きしめに行きたいけど、ここは潤が一人で乗り越えるところだと思ったからぐっと我慢した。
通話が終わった頃には、手のひらにびっしょりと汗をかいていた。
「潤…?」
振り向いた潤はやっぱり泣いていて…
「大丈夫…?」
その声に返事はなくて。
でも潤は微笑んだ。
あの時みたいな、泣き笑いの顔。
「今、決着付けたから…」
ぐずっと鼻を啜ると、潤は立ちあがった。