第5章 こひくれない
「待ってるから…」
「翔くん…」
「俺は、待ってる」
これって浮気になるんだろうな…
だけど。
我慢できなかった。
潤の顔を引き寄せて、唇に口付ける。
そのまま抱き寄せてソファの座面に押し倒すと、潤は泣きそうになりながら俺を見上げた。
「もっと…」
「え?」
「もっと触りたい…」
「潤…」
「もっと翔くんと…一緒に…」
伸びてきた腕が俺を抱き寄せた。
そのまま潤の広い胸板に倒れ込むと、ぎゅうっと抱きしめられた。
「一緒に居たい…」
多分…ずっと…
お互いにずっと蓋をしてきた感情が、止まらないんだろう。
潤も一緒だったんだ。
俺はこの感情と付き合って長いけど、潤はこの前気づいたばっかりだからな…
彼女ともはっきりできない今の状況で、感情を露わにするのが難しいんだろうな…
俺は立ち上がってサイドボードの引き出しを開けた。
「翔くん…?」
潤のところに戻ると、それを差し出した。
「これ…持ってろ」
「え…?」
「家の、合鍵」
潤の手に無理やり握らせた。
「俺は…いつでもいいから…」
潤の身体の空いたときに、好きに家にきたらいい。
そしたら…
今までの時間と距離を埋められるだろうから。