第5章 こひくれない
福岡以来、初めて二人きりになって…
やっぱり抱き合ったまま、無言になってしまって。
何を喋ればいいのかとか、何をすればいいのかとか。
わからなくて動けなかった。
「あのさ…」
「うん…?」
「キス…したい…」
リビングのソファの上。
俺たちは付き合いたての高校生みたいな会話してる。
心臓がバクバク煩い。
なんでこんな大人になって甘酸っぱい思いをするんだ…
相手が…潤だからか…
「キス…してもいいけど…」
「…けど…?」
「その先…いっちゃうかもしれない」
「…別に…いいんじゃないの?」
「でも…」
あの時は…勢いに任せて押し倒したけど…
正直、やることやるならお互いに気持ちよくなりたい。
そのための準備は密かにしたけど…
潤の身体に負担がかかってしまうかもしれないと思うと。
こうやって”いいんじゃない”って言ってくれてもなかなか踏ん切りがつかなかった。
「…彼女のこと…?」
「え?」
「ごめん…まだ、話はついてない…」
「そっか…」
それもある。
潤はまだ彼女と別れられてない。
別れる意志はあるけど、ってやつだ。
長年付き合ってきたのだから、そこは仕方のないことなんだろう。