第5章 こひくれない
東京に帰ったら忙しい日々だった。
新年から仕事は詰まってて、でも充実はしてた。
心の片隅にはいつも潤が居て…
なんにも約束のない関係だけど、潤の存在は俺の心を浮き立たせるのに充分だった。
でも、やっぱり。
ブレーキを掛けてる。
それは男同士だからとか、俺達が芸能人だからとか…
潤に付き合ってる彼女がいるからとか
いろんな理由からだったけど…
逢いたい
とは、言えなかった。
ずっと取ってきた距離…
それを埋めるのは容易じゃなかった。
潤がどんな生活をしているのか知らないし。
どんな趣味を持っているのか知らないし。
友人はどんなやつがいるのか知らないし。
知らないことだらけで…
レギュラーの収録の日。
コンサート以来、初めて顔を合わせた。
相変わらず目も合わさず、一定の距離を取る。
あの時はあんなに近づいたと思ったけど…
非日常だったから。
日常に戻ってしまった今、どうしていいんだか皆目わからなかった。
収録が終わって帰る準備をしていたら、潤が近寄ってきた。
思わず目を合わせると、潤は頷いた。
どこか行こうってことだろう。
頷き返すと微笑んで…
家に帰ってから連絡してみたら、もう家の前に居るって言われた。