第5章 こひくれない
その日はリハーサルが終わると、すぐにホテルに戻った。
ツアーもラストになってくると、仕込みにも時間はかからない。
潤はまだドームに残っているけどね。
すぐにシャワーを浴びてバスローブのままくつろいでると、部屋をノックする音が聞こえた。
「開いてるよー」
そっとドアを開けて入ってきたのは潤だった。
「え?あれ?もう戻ったの?」
「うん。抜けさせてもらった。もう決めることなかったし…」
もじもじしながらドアの前で立ってるから、立ち上がって潤の腕を引いた。
「翔くん…」
潤の背中にあるドアの鍵を締めると、潤をぎゅうっと抱きしめた。
「充電、させてやる」
「え?」
「いっぱい、俺を充電してけよ」
彼女と別れるのに、多分ものすごいパワーを使ってる筈で。
弱ってるんだろうなと思った。
潤も俺の背中に腕を回してぎゅうっとしがみついてきた。
「うん…ありがとう…」
そのままベッドに倒れ込んで抱き合ったまま俺たちは眠った。
福岡にいる間、ずっと潤は俺の部屋で眠っていった。
こんなこと今までなかったから、周りは驚いてた。
こんなにべったりするのは、学生時代以来だったから。