第5章 こひくれない
いつの間にか眠ってしまっていたみたいで、目が覚めたら潤が隣のソファに座っていた。
「あれ…どうしたの?」
「んー、ちょっと機材がトラブってるからその間休憩」
「そっか」
身体を入れ替えて、潤の方に頭を向けてごろんと寝転がった。
その頭を潤がぐしゃっと撫でていった。
「…彼女と話ししたよ」
「え?」
「俺たち、別れることになると思う」
「…そっか…」
こいつは素直なやつだから…
こんな気持ちを抱えたまま、彼女とは付き合っていくことなんてできないんだろうな。
もしもそのまま付き合っていくとしたら、彼女のことは本当に俺の代替に使ってるってことになるし。
そんなことは、長年付き合ってきた彼女にはできないんだろう。
いくら代わりだってわかってたとはいえ、相手が誰なのかわかってなかったんだ。
それがわかった今、潤はもう裏切れないって思ったんだろう。
「俺だって言ったの…?」
「ううん…言う必要、ないでしょ」
「まあな…」
またくしゃっと潤は俺の頭を撫でた。
「…わかってくれそうなの…?」
「まあ…多分…」
歯切れが悪いってことは、揉めてるんだ…
だろうな。
彼女は事務所を独立したばかりだし。
不安定なんだろうな…
「いつでも…言えよ」
「え?」
「なんでも言えよ?」
「翔くん…」
そっと手を伸ばすと、潤はそれを握った。
「ありがと…」