第5章 こひくれない
次の日から福岡に入った。
コンサートツアーのラスト。
これが終わったら、暫く俺はレギュラー以外の仕事はなくなる。
潤は次の映画の撮影の準備に入るとのことだった。
行きの飛行機の中ではバラバラに座って。
空港に迎えに来ていた車に乗り込んでもバラバラで。
ドームの控室に入ったとき、やっと潤と目が合った。
「あ…」
潤と久しぶりに目を合わせても、何を言えばいいのかわからない。
「えっと…俺、ステージ行ってくる」
演出の潤は、早速ステージの上がり具合を確認しにいった。
これからリハが始まるから、ジャージに着替えて俺達は待機した。
スタッフに呼ばれてステージに行くと、もうあらかた組み上がっていた。
ステージに登って、ツアー最後の挨拶を一人ひとりした。
潤は演出席からの挨拶だった。
俺達の距離は…離れてる
それはずっとそうしてきたから。
意識してそうしてきたから。
一旦、控室に帰って次の指示待ちをしている間、俺はソファで横になっていた。
別に疲れているわけじゃないんだけど、何をしていても落ち着かなかったから。
目を閉じると、昨日のことが思い出された。
なあ…潤…
俺たち、どこに向かっていけばいいんだろうな…