第5章 こひくれない
「俺は…なに?」
ぎゅううっと潤の腕に力が入った。
「言って…?翔くん…」
潤の匂いをこんな近くで感じる。
頭の中が、潤でいっぱいになる。
「好きだ…」
精一杯だった。
「うん…ありがとう…翔くん…」
ふらりと身体が離れたかと思うと、ストンと潤が隣の椅子に座った。
「あはは…腰、抜けた…」
そう言って潤は泣き笑いを浮かべた。
「俺たち…両思いだったんだね…」
俺の手を取るとぎゅっと握った。
「…すごく回り道しちゃった…」
つぶやいた声が、重く心に響いた。
それからずっと俺たちは手を繋いだまま座っていた。
お互いの気持ちがわかったからと言って、俺達を取り囲む状況は変わるはずはない。
それは潤もわかっていると思う。
おまけに俺たちは男同士だ。
こんなこと、世間では許されるものでもなく。
芸能人である俺たちには、あまりにも障壁がありすぎた。
繋いだ手のぬくもりだけが確かなもので…
後は、不確かなもの。
「これから…どうする…?」
俺の問いに、潤は微笑んだ。
「なるようにしか…ならないんじゃない…?」
なるようにしか、ならない…
それが、何を意味するのかは俺にはわからなかった。