第5章 こひくれない
「翔くんの顔を見たら…なんかわかった気がした…」
「え…?」
円を描いていた指が、ゆっくりと俺に近づいた。
その指が俺の腕を触った。
びくりと身体が揺れる。
「…翔くんは、俺が、好き?」
一番…知られたくないこと
喉が一気に干上がった気がした。
この世で誰にも知られたくなかったこと。
自分の恥部ですらあると思っている。
心の奥の更に奥に穴を掘って埋めている感情が、よりによってその本人によって暴かれるとは…
「…なにを…言って…」
「じゃないと、説明がつかない」
俺達は男同士だ。
男同士であんなことになってしまうなんて、そこに感情がなければ成立しない。
大体、物理的に俺の身体に変化が起こっている。
男同士では、通常ない変化なんだから…
潤の言うことに、なんの言い訳もできなかった。
「なんで…来たんだよ…そんなこと、確認するためにきたのか?」
目を手で覆いながら、なるべく感情を潤に読み取られないようにする。
「翔くんの気持ちじゃなくて…俺の方の確認に来たんだ」
「…え…?」
「俺は…彼女を愛しているよ?でもね…」
潤は俺の目を覆う手を取ってしまった。
まっすぐに俺を見つめると、にっこり笑った。
「それは、代わりだからだよ?」