第5章 こひくれない
温まったおかゆの入った器を前に、動くことができなかった。
しばらくすると、潤は俺の隣りに座ってスプーンを持った。
「食べないと…食べさすよ?」
「えっ…」
そう言っておかゆを掬って俺の口元に差し出した。
「ま、待てって…」
「早く。食べて」
仕方がないから口を開けたら、スプーンを口に突っ込まれた。
「あちっ…」
「ごめん…」
次はふーふーしてから口に入れてくれた。
なんだか知らないが、そのまま全部食わされた。
全部食べ終わると、食器をキッチンに運んでいって潤は戻ってきた。
シンとする部屋で、ただ黙って潤は俺を見ていた。
ダイニングテーブルに手だけ置いて。
水の入ったコップに水滴がついてる。
一体俺たちは何をしてるんだ。
「…落ち着いた…?」
そういえば、腹に食べ物が入ったら少し落ち着いた気がする。
「昨日…眠れなかったんでしょ…?」
「お前だって…寝てないんだろ…」
「うん…身体、痛くて寝れなかった」
「ごめん…」
コップの水滴を人差し指で拭うと、テーブルに雫が落ちた。
「ごめん…潤…」
「翔くん…そんなに、俺が憎い…?」
「え…?」
「あんなことするくらい…俺のこと憎いんだね…」